山羊の沈黙

たくさん読んでたくさん書く生活を模索しています。

2010-01-01から1年間の記事一覧

酔魔

バイト先の出版社の仕事納めで、夕方から納会。下っ端アルバイトの私はひたすらお使い担当である。午後になってケータリングの食べ物や酒が届き始めると、私も寿司やらサンドイッチやらを買いに行かされた。1万5千円分ほどの食料を抱えて歩きながら、今車…

メモ

三島由紀夫「劇画における若者論」ただ、世の中といふのは困つたもので、劇画に飽きた若者が、そろそろいはゆる「教養」がほしくなつてきたとき、与へられる教養といふものが、又しても古ぼけた対象教養主義のヒューマニズムやコスモポリタニズムであつては…

河瀬直美「玄牝」――膣磨きの陶酔

まさしく膣だ――しっとりと暗い“古屋”の中から、光さんざめく戸外を映したカットを観る度に、私はそう思った。二十三年前、私もこの陰りから、祝福の光のもとへと走ったのだろうか。外に出た瞬間の号泣も、母の喜びも、もはやすっかり忘却の彼方だが、今にも…

罪深い顔

それをモンズは「罪深い顔」と表現した。強盗や殺人以外にも、罪と呼びたくなる領域があることを、私達は知っている。それは例えば、ムーランルージュの堕落した狂乱に淀む罪であり、酒に浸った後の疲れそのものの罪である。それらの尾を束ねるのが、キリス…

卒論のためのメモ3

(前半不明)当然、オタク的なものの進化と時代を共にしているという実感は、それによって着実に強まっていった。私自身が“ハマれる”作品は一向に増えていかないのに、熱狂的な“オタク”の増加の気配は濃く、TVや雑誌をはじめとしたメディア、それにアカデ…

卒論のためのメモ2

私はしばしば、そこから外れた、極めて主観的で、個人的な記述の方を強く好んでいた、という事実である。例えば私は、クリエイター達の個人的な経験談などを読むのが好きだった。そのきっかけははっきりしていて、小学一年生の時に父親から与えられた、小学…

とある映画好きの先生に出した手紙

大学3年か4年のときに書いた文章。 _______ 貧乏なのに**のような学費の高い大学に入ってしまったせいで、私は毎月バイトバイトバイト三昧です。生きのびるって大変です。確実に辛いことの方が多い。仕方がないことですね。まあそんなに悲壮な気分ではない…

創作:光の記憶

大学生のときに書いた、5〜10分で終わるイメージの映像シナリオ。 おそらく2009年か2010年。 __________ S1 建物の屋上 青空の下、白い服を着た男女が、背中合わせで立っている。男モノローグ「僕達は白い鳥」女モノローグ「私達は白い蛇」男モノローグ「…

創作:光の記憶

大学生のときに書いた、5〜10分で終わるイメージの映像シナリオ。 おそらく2009年か2010年。 __________ S1 建物の屋上 青空の下、白い服を着た男女が、背中合わせで立っている。男モノローグ「僕達は白い鳥」女モノローグ「私達は白い蛇」男モノローグ「…

卒論のためのメモ

この文章をいつ書いたのかまったく思い出せないが、2010年11月前後のメモではないかと思う(2022/11/28)。 _____ 卒論を書くにあたり当然ながら、同校の先輩の卒論をはじめ、いくつもの論文を読んだ。ありとあらゆる文章があった。宮崎駿や押井守など、多く…

「REDLINE」――ゴーカートの愉悦

こういうのを待っていた! 開始から二分、顔がにやつくのを止められなかった。太い輪郭線に黒々とした陰影、大胆かつポップすぎない色使い。エンジンの轟音を唯一のビートに、どこまでも伸縮自在に歪み、疾走し、弾けとび、爆発する色彩と描線のカーニバル。…

パエトン

夏の日差しに後悔ばかりしていると目の前にパエトンが落ちてくる アスファルト熱い、熱いね 私も 何度でも落ちてくる彼のこっちを見るただれた目玉地面をかく焦げた指 言うこと聞かなかったから 熱いね あーあ ため息がじゅうじゅう 吸い込まれる熱い道パエ…

スープ

お前と歩いているせいでここが町の谷底になりましたお前が喋り散らしているせいで吐いた息が溜まっていきましたにごった空気は重いのだ おおい 誰か 上からかき混ぜてくれないか 木のスプーンなら舐めた時に気持ちがいい

「借りぐらしのアリエッティ」――不在の心臓

この映画で描かれる「小人族」の生活には、奇妙に浮ついた印象を抱いた。彼らは、人間の食べ物や小物を「借り」て生活している。その行為は我々の価値観に照らし合わせれば「盗み」なのだが、彼らは、そこに特に思うところはないらしい。アリエッティが、翔…

映画「恐怖」

六、七歳の頃だが、「なんで今この瞬間、私はここに存在しているといえるのか」などという小賢しい疑問にとりつかれたことがあった。幼心に、その疑問に終着点がないことを感じ、これ以上「先」へ進むと頭がおかしくなるかもしれない、という予感に襲われた…

一本目

S1 武道場 大勢の剣道部員が打ちあっている。一際激しく戦っている大崎と池田。 つばぜり合い。池田が大崎を突き飛ばす。転がる大崎。大崎、床を小手で殴り、勢いよく起き上がると、池田に突進。二人、再び強くぶつかり、面金越しににらみ合う。斉藤「やめ…

骨壷

S1 みちるの家(夜) ワンルームマンション。床の上に、三つの箱が置いてある。 みちる、ソファにひっくり返って電話をしている。みちる「え? 大丈夫別に怖くなんかないよ。死体じゃあるまいし。ただの骨だもの。ん? えーと、パパと、パパのお姉さんと、…

卒論に向けてのメモ4

何度か言っているし、書いてきてもいるように、私のマンガ・アニメ体験というのは少々偏っていると思う。私は、音楽はクラシック、映画は古典、アニメはディズニーと『ドラえもん』、マンガは手塚と『サザエさん』、という古めかしい環境で育った。教育的に…

ミュージカル・テニスの王子様「The Final Match 立海 Second feat. The Rivals」

『ミュージカル・テニスの王子様』は、マンガ『テニスの王子様』の舞台化作品で通称を「テニミュ」という。これまで生観劇の機会に恵まれなかったのだが、先日の名古屋公演でようやく劇場に足を運ぶことができた。公演名は「The Final Match 立海 Second fea…