山羊の沈黙

たくさん読んでたくさん書く生活を模索しています。

姉心

 どうにか脱稿。いつもよりかなりギリギリだった。会社仕事の方も時勢を受けて当然の如く忙しく、脱稿前の傷めつけられた神経に障る。
 夕方には、緊急事態宣言の中継を会社の人たちとともに見た。ここまでいろんなニュースを浴び続けてきたせいで、緊急事態宣言自体にはもう「まあ少し区切りがついたかな」という気持ちしかない。
 夜、予定が一件バラしに。だけど原稿も終わって気楽になったし、フルメイクもしてしまったしということで外出したくてうずうず。とはいえ不要不急の遠出はさすがに憚られ、結局家の近くのとんかつ屋で食事をする。店内には私の他にもう1、2組しかいなかった。食後、明日のzoom飲み会に向けてそばの酒屋で酒を買う。度数低めの純米酒にごり酒
 とんかつを食べながら、アニメ「ご注文はうさぎですか?」のことを考えていた。
 主人公ココアの姉の「モカ」、彼女はかなり危険な姉だと三人きょうだいの長女である私は思う。彼女は作品内では優しく頼もしく美しいお姉ちゃんとして描かれているし、周りのキャラクターたちもそう扱っている。しかし私には彼女は一種の「毒親」に見えるのだ。モカの「ココアが自分に対して冷たい」と泣く姿、そして妹であるココアの「自分より小さな女の子を『妹』にして、自分が姉にされたことをそっくりそのまま『妹』に対して行いたい」という欲望の強烈さは、私のなかでどうしても「姉妹」ではなく「母娘」という概念を連想させる。なんだか怖くて、モカ回の後半であるシーズン2の6は途中で止めてしまった。
 モカのあの「姉ムーブ」の強さ、滲み出る支配欲に拒否感をいだいてしまうのは、当然ながら私自身にそういう性質があるからだ。そして私は、自分のなかのそういう性質を強く恥じておりまだ肯定できていない。
 そういえば前の日記にも書いたが、終電間際の電車でストレスから倒れた見知らぬ女の子を介抱して、夜中のファミレスに連れていったことがある。一通り話を聞いたあと、半泣きの彼女から「みきさんのことをお姉ちゃんって呼びたい……」と言われ、「また偉そうに姉ぶってしまったんだろうか」と動揺した私。モカのようにはなれそうもない。