山羊の沈黙

たくさん読んでたくさん書く生活を模索しています。

デンマークのデザイン思考はガチだという話

夕方に東大へ。帝京大学高等教育開発センター講師の森さんの紹介で、「Educe Cafe」という勉強会イベントに参加する。

今回のテーマは「北欧の創造性を支える学びのエコシステム ―幼稚園児との長い旅から―」。専修大学ネットワーク情報学部教授・上平崇仁(かみひらたかひと)先生のお話を聞いた。

《概要》
デンマークは高負担高福祉政策によって国民の"平等"が根付いていながら、国際競争力の高さを併せ持つという不思議な国です。1年間のデンマーク滞在において、4 歳児と1歳児と共に現地の幼稚園に通い、デンマークの子供達の学習環境を観察したり人々と交流したりする中で、彼らが形作っている社会の仕組みや、そこにおける光と影が少しづつ見えてきたと上平さんは言います。今回は、上平さんが滞在中に子供と経験したこと、デンマークの小さな街にあるデザイン教育に特化したデザイン幼稚園、地域のこどもたちを巻き込んだルイジアナ美術館の建築プロジェクト、スウェーデン南端の街マルメにある廃材を利用した造形センターなどのユニークな事例をもとに、こどもたちのクリエイティビティを高める学びの場を形成している社会のエコシステムを読み解いてみます。またこれらの遠い国の取り組みを参照しながら、我々の日本社会においてはどのようにデザインできるのか、をフロアの方とディスカッションできればと思います。(公式サイトより)

聞いて印象に残ったポイントをいくつか。有料のイベントなので詳細は書かないけれども。

・北欧は全体的にデザイン思考の進んだ国だが、その中でもデンマークは極めてユニークな国。(森さん曰く「北欧の中で一番、他国が真似をしづらい国ではないか」)。
デンマークは、国民に対するデザイン教育が徹底している。デザインという概念に「プロダクト」と「プロセス」のふたつがあることを市民向けのワークショップなどで教え、デザイナーとそれを求める市民のマッチングも行政が行う。
・そういう国なので、建築家の地位が非常に高く、尊敬されている。政治・行政における存在感も大きい。
デンマークの特殊性。異様なフラットさ。小さな子でも完全に大人扱いするし(1歳児を寒空の下に放り出して遊ばせたりする)、児童に対して非常に高い社会性、感情バランスを求める。教師がいちいち子供の名前を覚えたりすることもない。子供たちにも「先生を尊敬する」という感覚がない。日本人から見るとそれは少々受け入れがたいものであるし、文化が違うので無理に真似するものでもない。
・国民全体に、そ徹底したフラット主義とデザイン思考が根付いているのは、デンマークが小国であり(福岡市と同じくらいの規模しかない)、かつドイツという大国が近くにあったことの影響が大きい。
・「好奇心はみんな最初からあるわけじゃない。だからこそ子供達全員に同じ機会を持たせなければならない。それが教育の場」

北欧というのは何かと「お手本にしよう」論調で取り上げられることが多いエリアで、とりわけ教育の領域ではそれが顕著だ。文化も風土も違う日本で全てを真似するのは到底無理な話だが、それでもやっぱり、あちらの考え方には刺激を受ける。日本に取り入れたいものもたくさんある。うまく取り入れられればいいんだけどねえ……、という後ろ向きな言い方もよくないな。

デザイン思考というのは、その場の求めるものを生み出せるからデザイン思考なのであって、「北欧式がはまらない日本はクソ」などという発想にはデザイン性のかけらもない。我々は我々で、ここにしかありえないデザインを考えていくべきなのだ。あと、「いやーデザイン思考いいよねー必要だよねー」って言ってるだけの奴は何も考えてないんだよなと改めて思った。

雑談で面白かったのが、日本人の不信感についての話。時給1000円の仕事を一人で行うのと、時給2500円の仕事を二人で行って報酬を分けるのとでは、日本人は圧倒的に前者を選びやすいという。コミュニケーションにおけるリスクを極力避けようとするのだ。それが結局、コミュニティデザインを少々複雑にしている面は否めない。実際のところ、リスクが少ないことが必要なのか、リスクが少なく見えるのが大事なのかどっちなのだろう。

ともあれ面白い勉強会だった。上平先生に、デンマークの政治やフードロスの取り組みについて質問したらいろんなことを教えてくれて嬉しかった。

会場では他に、Eさんにお会いした。4年前に一度名刺交換をしたきりだったのに、覚えていてくださって驚き。

久しぶりに「勉強が楽しくて仕方がない」人たちと接して、私ももっともっと学ぼう、と思わされた。ひとまずは興味のある分野からコツコツと。

 

<今日の小池飯>

朝:なし

昼:東大UTカフェのチーズケーキとアイスティ

夜:近所の居酒屋で梅酒とか魚とか

メモ:冷たいものばかり飲まないように気をつけること。