山羊の沈黙

たくさん読んでたくさん書く生活を模索しています。

寒い

 昨日の雨から、めっきり寒さが増した気がする。
 冬だなあ。

 今日はなんだか変な夢を見た。指の先くらいの大きさしかないハムスターとねずみが、何百匹もいる洞窟の中の夢。人間もたくさんいた。私は何故か何度も変な魔法みたいな攻撃を食らって死んでいた。
 最近変な夢ばっかり見る。昨日は、人骨発掘の夢だったし。
 夢占いによると、骨は自分自身らしい。新しい自分の発掘ができるということ? 

 

***


 とりとめもない話。


 Kとまた、作業ついでに三時間くらい話した。部屋の天窓には、雨がばしゃばしゃ落ちてきていてうるさかった。そして寒かった。

 色々大変なことが重なっているのは知ってるけど、彼のあまりの欝っぷりに、こっちがあてられて凹んだ。なんというネガティブ、自己否定。野心家の私には理解できないような言葉が呪文のようにずるずるずるずる次から次へと出てくるから、対抗するのに苦労した。
 勿論、理解できないというのは、そういうことを「口に出す」行為のことであって、話していることの中身は、至極共感できることなんだけど。
 でもそれにしても、今日のKは暗かった。

 何かいけないことを言ってしまったんだろうか、途中からのKの憔悴振りはものすごくて、顔色は悪いわ目はうつろだわ、どうしたらいいかわからなかった。うつむいて固まってるKさんをじっと見ながら途方にくれた私。Kの脳みそを切り開いて、中の物質並べれば原因がわかって取り除ける、というのならそうしたいくらいの気分だった。
 結局私が行かなきゃいけなくなるまでKはそのままで、その後帰りにばったり会ったときも、まともな反応を返してはくれなかった。Oと二人、さっさと帰って行ってしまった。

 私が何を言っても何の影響も変化も与えられない上に、気休めにすらなれないんだなあということがひしひしと感じられて辛い。

 でも私は知っている。Kが欝になっているのは本当だけど、こういうときにこそ、本能で人を試しているということを。ここで「何考えてるかわからないから」「迷惑かもしれないから」といって適当に離れたら、私は間違いなくばっさり切られるんだろう。私も、そういう人に対してそうしてきた。私とそっくりなところを持っているK。見捨てづらい。
 どん底の自分を見せてもそれでも食らいついてきてくれる人間を、私もKも求めている。それは間違いなく甘えでありエゴなんだけど、でもどうしようもないくらい切実な問題だ。


 帰りは、Tちゃんと一緒にダットさんに車で送ってもらったんだけど、最初、億劫のあまり口がきけなかった。それじゃまずいと思い、しばらくKのことを冗談半分に愚痴る。
 ダットさんは、私よりずっとKとの付き合いが長い。「Kが愚痴っぽすぎてこっちが欝になる」とわめく私に対し彼が言うには、

「でもあいつ愚痴る相手は選んでるよ。俺にはそんなこと言わねーし。アンタは信頼されてるのさ」

 とのこと。
 まあ、そういうことは私も理解している。皆に言わなくても、私に言うジャンルの話はあるだろう。でもそれが、信頼に基づいているのかどうか、ということに対しては疑問を感じる。彼が私のことを親しく思っているのはわかるけど、同じくらい苦手にも思っているはずなのだ。私がそうであるように。
 信頼。難しいことだ。私はKさんのことを信用しているけども、信頼しているかと言われたら即答はできない。(恋愛という意味でなく)好きだけど、腹を探ることをやめようとは思えない。嘘は見抜かなければと思うし、見抜いた上でそれを利用しなければと思う。彼に対して嘘をつくことはままあるし、それは完璧に隠蔽しようと思う。愚痴る内容は選ぶし、見せられない面や、聞かせたくない本音がいっぱいある。
 勿論、それと同じくらい、聞いて欲しい本音も山ほどあって、武者小路実篤の「友情」の主人公のように、この傲慢な血を全てぶちまけても尚、私を愛し尊敬してほしい、とムシのいいことを考えているのだ。自分が、相手の傲慢な血を愛せるかどうかはわからないのに。

 帰っても悶々とした気分が続いて、母に愚痴りまくっていたら、それを聞いていたかのようにKからメールが来た。変な態度をとったことに対する謝罪と、手伝いに対する感謝の言葉。要約すると、いつもありがとう、今日はごめんなさい、というような。そんなことは別に大したことじゃないんだけどな。向こうも、それがわかってる上でこう書いてきているのだ。それすらわかってしまうところが哀しい。

 とにかくひとつづつ片付けていくしかない。
 別に感謝してほしいわけじゃない。見返りを求めているわけじゃない。私は私のエゴでしか動けないだけだ。

 Kさんが凹んでいたのは、朝飯抜きだったせいと、雨のせいだったんだと思っておこう。