山羊の沈黙

たくさん読んでたくさん書く生活を模索しています。

足裏の幸せと空島

 キッチンマットを新調した。ずっとボロボロの布製のものを使っていたが今回は撥水加工のビニール製。明るい色の柄物で、敷いたら台所が一気に明るくなった。
 朝食を作りながら裸足で台所を出入りしてみて、その気分の変わりように驚いた。足裏に感じる質感が今までとは段違いに快適なので、足裏から「いい感じ」が這い上がってくる。マットなんて普段踏んづけているものだし台所のマットは特に汚れやすいし、そんなに凝る必要はないだろうと思っていたがやっぱり違う。目の前に広がる色彩や形、そして触れて感じる印象によって、生活に対する気分はこんなにも変わるのだ。
 昼は家の近くのカフェバーへ、テイクアウトものを買いに行く。昼時でも、店の中には誰もいなかった。持ち帰りのカレーを頼み950円払う。待ち時間にメニューを見ていたら、バーメニューの方に『酒と恋には酔って然るべき』に出てきた獺祭があった。こういうことになる前に来てみればよかった、と少しだけ思う。カレーは予想以上に美味しく大満足。地味な町だが捨てたもんじゃない。
 19時半頃に勤務終了。運動をしながら、アプリジャンプ+で無料公開中の『ワンピース』空島編の続きを読む。何巻分か読んでみて、尾田栄一郎の一枚絵のセンスはやっぱり素晴らしいなと思った。とにかくおしゃれだ。絵柄自体は私の好みでないのだが、構図・モチーフ・一枚絵で表現するストーリー性に感じ入る。
 と同時に、尾田栄一郎の人間観や政治観が苦手であることも改めて再確認した。空島編を読んだのは高校一年の頃だったと思うが、これは私が初めてはっきり彼の思想に拒絶感をおぼえたパートである。モンブラン・ノーランドの「お前たちのやっていることは進歩に対する侮辱だ」というキレ散らかし方はやっぱり傲慢だし(傲慢なキャラとして描かれているならこれはこれでいいと思うのだが)、ノーランドから言われたことの意味を「理解」して動揺する空島の人々の描写も、私の感覚だと奇妙だ。最後の決裂と和解の流れも含めて、空島の人々がいかにもモブらしい、知性の欠如した(だけど理解力はある)動きをとるのがなんだか面白くない。
 私は主人公陣営とそうでない人々が同じだけの複雑性を持っている物語が好きだ。ただし、これが少年漫画らしいわかりやすさだ、と言われれば何も言い返せない。