考える引き出し

小池みきがなんでも書くところ・タンゴ練習記録多め

踊る前からタンゴは始まっている(レッスン24回目)

原稿に追われすぎていて精神が崩壊しそうなのでタンゴへ。

今日はいつもの先生たちの日ではなく、ブエノスアイレスから来たアルゼンチン人のA先生の日である。生徒は私を入れて3人だった。

A先生は日本語が喋れないので、パートナーのK先生が通訳しながらのレッスン。英語ならまあなんとかわからなくもないのだが、スペイン語でまくし立てられるとお手上げだ。ただ、英語と近い単語もあるのでときどきぼんやりわかることもあった。スペイン語もわかるようになりたい。

なぜかA先生は変な日本語ばかり覚えている。普通の挨拶言葉以外はほぼわからないらしいのだが、「酒は百薬の長」「ご注意ください」なんて言葉だけは知っているのだ。また、「まあまあ」を「マンマ」と発音していて、K先生に「それじゃママって意味だよ」と突っ込まれていた(日本語で)。

A先生が大切にしているのは「1にリズム、2にリード&フォロー、3にパソ」だそうで、エクササイズも基本ノリノリ。いつもの先生たちのエクササイズのBGMがディ・サルリのバイアブランカやpoemaだったりするのに対して、A先生はもっと陽気な音楽を使用していた。ダブルテンポを入れてのカミナータは楽しい。

練習中のアブラッソは、上半身を接近させないやつ(これも何か呼び名があった気がするけど忘れたな)。リードとフォローの感じをつかむためのエクササイズのあと、バルドッサにサリダ、オーチョを入れたサリダにオーチョ・コルタードなどを練習。

A先生は、いつもの男先生に比べて背が低いけど体はかなり分厚い。リードが非常にわかりやすくて踊りやすかった。入門クラスの基本ステップばかりだったこともあり特に危なげなくできて、先生に「スゴイスゴイ(日本語)」と褒められる。スペイン語だと、「良い」は「Bien」。

いい気づきもあった。オーチョ・コルタードのあと、男性が右胸だけを返してきたときはクロスで戻る、ということを今回初めて理解したのである。男先生は、初級以下の生徒にこの動きはやらないのかもしれない。されていたら私がクロスしないで後ろに歩いてしまうのに気づいていただろうし。

最初、何も考えずに普通に戻った際、A先生に英語で「ブエノスアイレスのやり方だと、これをしたときはクロスで戻るもんなの。オールウェイズ!」みたいなことを言われてなるほどと思った。そもそもあまりオーチョ・コルタードをやったことがないので、ちゃんと体に覚えこませるのには時間がかかりそう。

終盤はアブラッソの解説を聞いた。A先生も、うちの先生たちと同じようにアブラッソの大事さをコンコンと話す。「久しぶりに会った大切な友達と抱きしめ合うような気持ちで」アブラッソしてほしいとのこと。そこには、日本人が誤解しがちな性的なニュアンスというものは特にないのだと。

「タンゴは踊る前からもう始まってる。音楽を聴きながらアブラッソをしに行く、そのときにもう音楽に入り込んでいてほしいし、抱きしめあった時点でそれがタンゴの第一歩なんだ」

抱きしめ合うのがタンゴの第一歩、って素敵な表現だ。今タンゴは世界的にかなり流行っていて人口が多いんだけども、ハマる要因はたぶんパソよりアブラッソにあるのだろう、と先生たちは言っていた。私もそういう気はする。日本人にとってのアブラッソは、英語圏やヨーロッパの人にとってのアブラッソとちょっと違う気もするんだけど……。